統合失調症とは

統合失調症とは

発病率

発病率は約100人に1人といわれ、頻度の比較的高い病気です。国や地域、男女による大きな差はありません。
昔の著名人の中では、画家のゴッホ、作家の芥川龍之介、夏目漱石などが統合失調症であったといわれます。
慢性の経過をたどるものですが、最近では脳保護機能や低減された副作用などの特徴を持つ新薬が使われるようになったため、早期治療再発予防の努力がなされれば、長期的な回復を達成し家庭や社会で活躍し続けられる方も多くなりました。

発症の時期

思春期から青年期といわれる10歳代後半から30歳代の発症が多いですが、男女差がみられます。男性の発症年齢のピークは10代の後半から20代の前半で、女性の場合は二相性がみられ20代(大きなピーク)と40代(小さなピーク)にピークがあります。

発症の誘因と原因

発症の誘因と原因
進学、就職、結婚、肉親との離別などの人生の進路における変化が発症の契機となることが多いといわれます。ただし同等のストレスを受けても発症しない人もいることから、遺伝要因が影響すると考えられます。遺伝については、病気そのものというより病気のなりやすさ(脆弱性)が遺伝すると考えられます。その他にも、胎児期のウイルス感染や栄養不良、出生時の脳の微細な障害などが影響因子として疑われていますが、まだ完全には明らかになっていません。
統合失調症の症状

多彩な症状が出ますが、主に幻覚や妄想などの陽性症状と、思考障害や感情の平板化などの陰性症状が出ます。

陽性症状

幻覚の中でも最も多いのが聴覚の幻覚である幻聴です。誰もいないのに悪口や噂、批判する声や指示・干渉する声が聞こえます。一方妄想には、被害関係妄想、注察妄想、迫害妄想などがあります。また妄想に近い状態として、考えることが他人に伝わると感じる「考想伝播」や、思考や体験が操られていると感じる「させられ思考」・「させられ体験」などがあります。これらは自我障害のためにおこります。

陰性症状

陰性症状には、思考がまとまらない・途絶するなどの「思考障害」、生き生きとした感情が失われる「感情の平板化」、情緒交流をする能力の低下、行動・作業の遂行能力の低下などがあります。これらは生活能力の障害となり、時には独居が難しくなります。
統合失調症の経過

統合失調症の経過は、一般に病気の経過は、前兆期急性期回復期安定期に分けてとらえるとわかりやすいです。

前兆期

急性期に先立ち不安感や焦燥感、音や気配に敏感になるなどの感覚過敏、本を読めない、考えがまとまらないなどの集中困難の症状が出ます。この時点ではうつ病や不安障害などとの鑑別が難しいことが多いです。また、眠れない、食べられない、疲れ、頭痛など自律神経失調の症状も出やすいです。これらは、再発の前の症状とも似ています。

急性期

幻覚や妄想などの、統合失調症に特徴的な症状が出ます。不安や恐怖を呼び起こす内容の体験であることが多いため、会話ができなくなり、人を避けて引きこもることもあります。また、睡眠や食事のリズムが崩れて昼夜逆転の生活になり、周囲から奇妙と感じられる言動が見られることがあります。

回復期

速やかに治療を開始すれば、急性期の症状はしだいに収まり、現実検討能力も回復し、元の生活リズムと日常生活をとり戻せるようになります。激しい症状がおさまった後に疲労感や意欲減退が出て、将来への不安と焦りを感じるのもこのころです。焦って無理をすることなく、しばらくはゆったりとした生活をすることが後の良い結果につながります。

安定期

回復期を経て、安定を取り戻す時期です。ほとんど回復して以前とほぼ同じ仕事や生活の状態へと戻れる場合もありますし、幻覚や妄想などの陽性症状、集中困難などの陰性症状が残る場合もあります。一般的に、より早期に治療を始めるほど回復の程度が高いです。リハビリテーションにより社会復帰を果たし、治癒へと向かう多くの患者さんがいます。

予後

長期的な経過をみると、50~60%の方が治癒または軽度の残存症状があるのみになっています。現在は、10年20年前よりもより継続しやすく脳機能保護作用のある薬が開発されていることから、長期予後はさらに改善されることでしょう。重度の障害を残す場合は10~20%であるとされています。
症状が現れてから薬物治療を開始するまでの期間(未治療期間)が短いと予後がよいことが指摘されていますので、長期経過の面でも早期発見早期治療がとても大切です。