児童思春期外来

不適応や不登校がみられたら、児童・思春期外来を受診してみましょう。

近年は、多様な価値観が認められ生き方やキャリアも画一的なものではなくなり、従来の価値観に基づく学校教育との間で板挟みになり、適応不全傾向となるケースも増えていると言われます。また発達段階についての知見が広まり、個人の特性、成長の仕方や早さが異なることがわかってきました。気分や情動の波、頭痛や腹痛、食欲の波、学校での適応不全、などが出現した場合に、背景には種々のストレスや疾患が隠れている可能性があり、お子さんがいわばSOSを発しているとも言えます。生育歴や家族歴、家庭環境、などを総合的に加味してお子さんの特性や疾患を踏まえた対応が求められますので、一度児童・思春期外来の受診を検討してみられることをお勧めします。当院では上記のようなお悩みを抱えておられる方について、診断や治療(主に漢方を含む薬物療法)を行っております。なお療育や小中学生のカウンセリングは原則的に行っておりません。あらかじめご了承ください。

児童・思春期に好発する疾患について

児童・思春期に顕在化しやすい疾患には、社交不安症やパニック症、うつ病、双極性障害(双極症)、神経発達症(ADHD,ASD,知的低下など)、強迫性障害、統合失調症、などがあげられます。近年は児童をとりまく環境ストレスが増加していることも相まって、発症の低年齢化がみられる疾患もあります。下記に児童・思春期によくみられる疾患をご説明します。

☆社交不安症

10代半ばの発症が多いです。人前で特定の行為を行う際の強い不安恐怖感とそれに伴う動悸発汗、頭痛や腹痛、嘔気、などの身体症状が出現します。不安緊張をもたらす行為により、スピーチ恐怖、赤面恐怖、視線恐怖、会食恐怖、書痙、発汗恐怖などと呼ばれることもありますが、いずれも社交不安症に由来する症状です。内科を受診し種々の検査をしても身体には異常がみつからず、心療内科の受診に至ります。未治療のまま経過すると、登校拒否や引きこもりにつながるため適切な治療導入が必要です。

☆うつ病

小児の2%、児童・青年期(10代後半から30代まで)の5%に発症するといわれます。児童青年期のうつ病は、抑うつ気分よりはイライラ・焦燥感を示すことが多いこと、身体症状が多いこと、学力低下や希死念慮がみられる場合があること、などが知られています。双極性障害との鑑別や神経発達症(ADHD、ASD,知的障害など)との併存や鑑別が必要となります。

☆双極性障害(双極症)

感情のコントロール不全、イライラ、気分の波、などの大人よりわかりにくい形で始まることも多いと考えられます。また家族歴が20%程度に認められます。成人に比べて一般的に気分・情動の変動周期が早く、1日の中で大きく揺れ動くこともあります。ADHDとの併存例も比較的多く認められます。早期に診断して治療をすることで予後が大きく改善します。

☆神経発達症

①注意欠陥多動性障害(ADHD)
不注意や多動、衝動性が特徴の疾患で、情動の不安定性もしばしば伴います。学齢期に、クラスで離席してしまう、授業中にぼんやりしている、集中が持続しない、友達とのトラブルが多く円滑な友達関係が作れない、朝起きられず登校できなくなる、などの症状で気づかれます。未治療のまま放置されると、本来の能力が発揮できないばかりではなく、自信・やる気の低下、悪い習慣や行動、時には反社会的行動や学校のドロップアウトにもつながり将来に影響を及ぼしますので、早いうちに対処して軌道修正してあげることが重要です。治療法としては、薬物治療を軸にしながら、お子さんの自信を取り戻すような家庭、学校での働きかけが有効です。現在国内で認可されている薬物は、ドパミン及びノルアドレナリンに働くメチルフェニデート(コンサータ)、リスデキサンフェタミン(ビバンセ)、ノルアドレナに働くアトモキセチン(ストラテラ)、アルファ2レセプターに働くグアンフアシン(インチュニブ)があります。お子さんの症状や体質によりどのお薬が一番合っているのかを見極めて、安全性に十分配慮しながら最適な用量で継続することが大切です。内服についてご心配される親御さんがおられますが、一定の症状がある場合は薬物療法をお勧めしております。薬物による早期治療、早期の適応・症状改善により、学校生活、友人関係、成績、が好転しお子さんの自信と自己実現能力を高めてくれることが多いからです。

②自閉スペクトラム症(ASD)
対人コミュニケーションの困難や、行動や興味の範囲が限定され反復的であること、こだわりや情動制御の問題、感覚過敏、などがあるため学業や社会性において問題を生じます。知的障害やADHDとの併存例もあるため、適切な検査をして鑑別する必要があります。自閉スペクトラム症の原因はまだ特定されていませんが有病率は1%と報告されており男性に多く女性の約4倍の発生頻度です。自閉スペクトラム症の中核症状を治療することは今の医学では不可能ですが、かんしゃくや多動・こだわりなど、個別の症状は薬によって軽減することも多いものです。学校の先生やスクールカウンセラー、主治医とも相談の上で正しく理解し、各人にあった環境を整えるのがよいでしょう。